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6. 学振の研究遂行経費は申請するべき 大学院生に知ってもらいたいお金の仕組み1

対象で無い方にも理解していただけるよう、なるべく噛み砕いて書いていきます。

 

日本には国の学術振興を促すために学術振興会という組織が存在する。

これに応募し晴れて採用することで、特別研究員という扱いになり、(なぜか直接的な雇用関係は無いのだが)国の研究員として働くことができる。

対象は次年度に博士課程1年生(D1)となる学生、つまり4年制大学の修士課程2年生(M2)から、博士取得後数年以内の若い研究者である。

この学振の採択率は、分野にもよるがおよそ25%程度の選ばれた者であり、博士課程で採択される(DC1あるいはDC2とよばれる分類への採択)ことは、今後の研究者人生を左右するくらいに重要となる、まさに研究者の登竜門と言っても過言でないだろう。

 

そして、なによりも国の研究員として働き、(国民の皆様の血税から出た)給料をもらうことができる。(のに直接的な雇用関係にない!)

そのくせにTAとか覗いて副業禁止とか税務署の人が呆れるくらいにはグレーすれすれなんですよね。。。

 

これは、後に返還が要る奨学金を借りざる得ない学生や、研究が忙しくバイトしている余裕がない学生には大きな手助けとなる。*1

 

その給料は、博士課程学生対象の分類(DC1, DC2)で月額20万円である。

で、基本的には初めてちゃんとした大きなお金を貰っていくことになるので、いくつか疑問が生じる。そんな方に是非知っていただきたいと思いこのエントリーを書いた。

博士を志している大学院生の方には知ってもらいたいお金の話だ。

 

研究遂行経費

まず、研究遂行経費の申請である。これは、「給料20万円のうちの30%、6万円を研究のために使いますよー」と申請することで、それを非課税対象にできる。

つまり、6万円×12ヶ月=72万円が非課税となる。

ここでは申請をしなかったA君と研究遂行経費申請をしたB君の2パターンを考えてみよう。

A君はそのまま20万円×12ヶ月=240万円が年収となり、B君は240–72=168万円が年収となる。

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何が変わってくるのか

見た感じはB君の方が低い年収と思われるが、年収が変わるだけではなく保険料と税が大きく変わってくる。学生に知ってもらいたいが、自分の手元に実際に入ってくるお金を税からどれだけ守れるかが重要である。

では、研究遂行経費を申請しない(A君)と、した(B君)とでどのように違うのか。

まず、結果を述べると、①保険料が安くなる。 ②所得税・住民税が安くなる。これを合わせるとトータルで年間およそ14万円もB君が得することがわかった。

実際にモデルケースで紹介する。

A君もB君もDC1で採択され、年金を自分で払っている、生命保険には自分で加入していない

 というシンプルケースを設定した。

まず保険料や税は、昨年の1月~12月の給料を基に計算される。そのため、この金額が合致するのは、1月~12月まで学振給与をもらい続けた人が、来年度に支払う保険料や税を指していることを注意してほしい。

この場合だとDC1の人がD3の時に払うお金のことであり、DC2の人は社会人1年目(ポスドク1年目)であることから国民健康保険社会保険となり、国民年金は厚生年金となることに留意されたい。

 

給与所得

実際に税や保険料を計算するにあたって給与所得を用いる。

(ここでは額面の値を年収、実際の控除後額を給与所得と呼ぶことにする。)

例えば会社の給料には、文具やスーツ代のような経費も含まれている。なので、本当の賃金だけに税金がかからなければフェアではないので、経費を差っ引くというイメージだ。この経費が控除額、つまり、除外してあげるお金である。

それは、給与所得控除額と呼ばれ、A君とB君(年収180万円以下)で計算方法が異なる。

(令和2年度分の年収から計算方法が変わるので注意、ここでは令和元年までの計算方法)

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令和2年度からの指標も合わせて記載する。もし下限の値よりも少なくなる場合は、その下限値(65万)が給与所得控除額に適用される。

 

給与所得 = 年収 – 給与所得控除額

で求められ、A君は150万円、B君は100.8万円である。

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ちょっと長くなってきたので続きは次回にする。

次回は保険と税の計算についてまとめる。

 

 

 

*1:個人的にはせめて博士学生は平日は研究に専念した方が良いと思っている