7. 学振の研究遂行経費は申請するべき 大学院生に知ってもらいたいお金の仕組み2
【前回の記事】
wasureyasui-name.hatenablog.com
今回は保険料と税金について学んでいく。
まず、社会保険が何かを知っておく必要がある。つまり「健康保険」と「年金」だ。
学振に採択された場合、基本的には独立生計者*1となる。この場合、「国民健康保険」と「国民年金保険」に加入し、保険料を自分で払う必要がある。これが会社員になると、それぞれ「社会保険」と「厚生年金保険」となり、会社の給料から天引き(差し引き)される。
国民健康保険は<医療分>と<支援金分>そして<介護分>の保険料の総和となる。このうち<介護分は>40-65歳が対象となるので、学生には関係がない。
さらにこれらの区分の中に所得割、均等割、平等割がある。
- 所得割:前年1-12月の所得に応じて定まる
- 均等割:加入者人数分にかかる定額
- 平等割:1世帯当たりににかかる定額
とくに所得割は、賦課標準をもとに算出され、
であり、そこに<医療分>と<支援分>それぞれの税率が掛けられる。
ただし、この税率や定額は市町村によって異なり、平等割がない自治体もあるので自分の自治体の国民健康保険の計算方法を確認してほしい。ここでは、ググって出てきた、東大阪市のケースで計算する。https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000001709.html
では、実際に、給与所得160万円のA君と、研究遂行経費申請を行った給与所得100.8万円のB君で計算してみよう。
なんと、B君の方が6.5万円も保険料が安くなった!
このように、給与所得の差異は「所得割」に反映され、保険料が大幅に変わるのだ。
20歳を超えると、年金を納めるようになる。学振採用者のように雇用関係にない者は「国民年金保険」を支払う。なお、「学生納付特例制度」が設けられているため学生は、この納付が学生の間は後回しにすることができる。しかし条件として、本人の所得が一定以下*3である必要があるため、学振採用者は年金を修めなければならない!
国民年金保険料は定額で、16,540円(月額)*4なので年間、
1.6540万円*12 = 19.85万円
である。
所得税は、課税所得金額に対応する税率を掛けた値から税額控除額を差し引いた金額となる。課税所得金額は
課税所得金額 = 給与所得 – 各種控除
で求められる、各種控除には基礎控除(38万円)の他、社会保険料などがある。他にも扶養家族控除もあるが一般的な学振採択者(独身、生命保険に加入してない[親が加入など])では社会保険料控除のみを考えれば良い。
次にかけられる税率だが、課税所得金額が195万円以下の場合5%となる。したがって、
結果として、B君の方が3.6万円も安くなる!
住民税は所得割と均等割の和であり、所得割は課税所得金額 に税率を掛けた金額となる。その税率は、市民税分と県民税分があり、合計10%が基本となる。*5
均等割は定額であり、市町村によって異なるが、およそ5千円程度である。
課税所得金額は所得税の場合と同様に
課税所得金額 = 給与所得 – 各種控除
で算出され、基礎控除は33万円となる。したがって、
結果として、B君の方が4.2万円も安くなる!
以上を合わせると、B君はA君に比べておよそ14万円も得することになるのだ。
とくに給与の少ない学生にとっては大きな額となる。
今回は研究遂行経費を申請した場合について述べたが、72万円をすべて研究遂行経費として使い切った場合である。